7月に2日間の職員研修を実施してまいりました。地域の中小企業の支援の中核を担う商工会の経営指導員の方々向けに、ITツールの導入支援をテーマに2時間×2日の職員研修を企画させていただきました。
職員研修の背景
中小企業においては、人手不足や法改正などの事業環境の変化によって、ITツールを導入して業務を変えていくことが必要となっています。そのため岡山県では中小企業のデジタル化・IT化を進めるためにさまざまな事業に取り組んでいます。その岡山県が取り組む事業のうちの一つが、商工会会員企業へのITツール導入です。
しかし、いざITツールを導入してもらうといっても、高齢化も進む中小企業ではなかなかできることではありません。そこで日頃から中小企業を支援している商工会の経営指導員が、中小企業のデジタル化・IT化を支援することになりました。
とはいうものの、商工会の経営指導員の皆さんも融資や事業承継の相談、補助金のサポート、創業相談、記帳指導など、通常業務としてさまざまな業務を担当しており、日頃からITツールの勉強だけをできる環境ではありません。そういった背景があって、商工会からITツールについて時間をとって勉強する機会が必要だとのことで、今回の研修の依頼がありました。
職員研修の内容
今回の研修では中小企業向けのITツールを網羅的に紹介してほしいとのことでしたので、1日目にITツールを分類ごとに紹介し、実際にインストールして使い方を体験する研修を、2日目にITツール導入の支援方法の実践と企業の問題・課題を把握するトレーニングを企画しました。
【1日目】
ITツールは非常に多く、特にSaaSは急速に市場を拡大しています。IT活用のセミナーや研修、IT導入相談を請け負う当社であっても、全てのITツールを追うことは非常に難しいです。ITツールを網羅的に学ぶということは、専門のIT業者であってもなかなかできないことなので、今回は要点をまとめながら、中小企業の中でも小規模の事業者にとってより効果が高いと思われるITツールを選別して紹介しました。
上の図は、ITツールを分野別に分類し、その中で中小企業が導入したITツールについて効果を調査したものです。この調査結果によると、ITツールを導入した企業のうち、最も多く導入したITツールは会計システムであり、また会計システムが最も効果が高かったということになります。(商工中金「中小企業のIT・ソフトウェア活用状況に関する調査」)
今回の研修でも、網羅的にITツールを紹介したのですが、会計システムについては他のITツールよりも時間をとってしっかりと説明しました。
【2日目】
ITツールの導入支援の方法について、支援機関の中でもなかなか浸透していない現状があると感じていたので、改めてITツール導入の基本的な手順と方法について説明しました。
ITツールの導入については、中小機構がしっかりとまとめたウェブサイトを作っています。そのサイトでは、「IT戦略ナビ」や「ここからアプリ」を使ってITツール導入を進めていくことが紹介されています。
IT戦略ナビ:https://it-map.smrj.go.jp/
ここからアプリ:https://ittools.smrj.go.jp/
さらに、中小企業の課題を設定し、適切なデジタル化・IT化を提案する力をつけるために、問題・課題トレーニングを行いました。当社が作成した特定のワードが書かれたカードをランダムに配り、そのカードを問題、課題、対策のそれぞれに分類してもらい、論理的な内容になるように並べ直すワークショップを実践してもらいました。
例えば「人手不足」というカードは問題なのか課題なのか、課題に対する対策としてどのカードを選ぶのが良いか、などをグループで話し合ってもらいながら、問題に対する課題、対策を選んでもらいました。この過程で、問題と課題を切り分ける重要性や課題設定の難しさを体験してもらうことができました。
職員研修を終えて
特に1日目は2時間で網羅的にITツールを紹介してほしいという依頼だったため、かなり詰め込んだ研修内容となりましたが、普段使うことのないITツールを実際にインストールして触ってみることで、指導員の皆様にとって良い経験になっていたようです。
2日目の問題・課題トレーニングは想像していた以上に話し合いが盛り上がり、いい雰囲気のワークショップになりました。
今回はITツールを学び、実際にITツール導入を体験し、IT活用を支援する上で重要な中小企業の問題を把握し、課題を設定することを目的とした研修を企画させていただきましたが、概ね目的は達成できたように思います。
ITツールを導入する上で企業が取り組むべきことは、業務フローを把握すること、企業の課題を認識することです。中小企業の支援に最初にあたる方々には、これらのサポートができるようになることが重要だと考えています。
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