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契約時に注意したい「工事保険」

前回の管理下財物の記事が多く読まれており、多分保険関係の方が読んでいると思いますので、今回は何かと誤解が多い「工事保険」についてお話しします。


工事保険については、建設業の方にとって必要な補償がセットになっている保険である一方、多くの建設業の方にとっては必要のない保証も多い保険となっています。私も保険営業をしていたときには、事業の実態に合わない保険契約をよく目にしました。社長に説明して、契約を切り替えてもらうと、かなり保険料が下がるので、なんだかモヤっとしていました。


他社からの切り替え時に保険料が下がると、他社の保険募集人より手数料が低い提案をしているわけで、特に建設業においては適正な保険契約の提案ができればできるほど、提案の価値がマイナスになるという不思議な状況になっていました。この経験から、自分の提案に価値をつけて料金を取ろうという思いが強くなり、今のコンサルティング業への転職につながっています。


ちょっと脱線しましたが、工事保険は業界の慣習や事業内容、特有のリスクなどをよく理解しておく必要があります。その上で社長と話をしながら保険内容を決めていくことになります。


目次

  1. 工事保険とは

  2. 工事保険が必要な業種、不要な業種

  3. よくある工事保険の契約誤り

  4. ヒアリングの際に気をつけること


1.工事保険とは

工事保険とは一般的には工事の期間中に発生した災害や事故による損害を補償するための保険です。また損害賠償責任保険もセットになっており、工事期間中のさまざまな事故に対応できる保険となっています。


つまり工事保険は「火災保険+賠償責任保険」と考えてもらうとわかりやすく、被保険者が所有している物に対する補償と、他人の身体や財物に対する補償の2つの補償で構成されています。


工事をする際に、自社が所有する物が現場にない場合も当然あります。その場合は仮に火災保険部分を契約していたとしても、補償される対象がありませんので、保険をかけても意味がないということになります。


2.工事保険が必要な業種、不要な業種

建設業であれば全ての企業が工事保険を必要とするわけではありません。例えば、水道工事や電気工事などはほとんどの企業で不要です。


そこで、どのような業種であれば必要で、逆にどのような業種であれば不要なのかを説明します。


まず、一番わかりやすいのは「元請け」か「下請け」かで判断することです。元請けであれば、発注者に対して建物などを引き渡すまで、自社で責任を持って管理しなければいけません。そのため、失火や台風などの被害があった場合には、注文通りの状態で引き渡すための費用を火災保険で補償することが必要になります。


下請けであれば、元請けの仕事の一部を請け負い、現場で施工するだけなので、施工した建物などを所有することはありません。管理するとしても一時的です。そのため、施工期間中に失火や落雷、台風に見舞われ、建物に被害があったとしても、下請け業者に保険金が支払われることはありません。


ただし、「元請け」や「下請け」といっても、はっきりとどちらかに区分できるわけでもありません。「7割元請けで3割下請け」のような企業もあり、どのような事業内容なのかはそれぞれ確認する必要があります。


また別の判断方法としては、専門的な業種かどうかというものがあります。内装業、塗装業、水道工事業、電気工事業、解体業、リフォーム業などの専門的な業種は基本的に不要です。これらの業種は仮に工事保険に入ったとしても支払われる保険金の額は非常に少額となると思います。


3.よくある工事保険の契約誤り

よくある契約誤りとして、内装業の企業が工事保険に入っている場合があります。元請けからの依頼や顧客からの直接注文で、家具などを備え付けるような事業内容の企業であれば、作業対象物(建物自体)に対する補償は賠償責任保険で対応することとなり、火災保険では対応することができません。工事保険の保険金額を作業現場の建物の保険価額に合わせているような契約は誤りとなります。


工事保険の趣旨とはズレるのですが、「施工中や運搬中の災害や事故の場合はどうなのか」という疑問については、誰に責任があるのかによって異なってくるとの回答になります。事故の場所・状況や責任の所在によって対応する保険がさまざまですので、もはや工事保険でどうにかする内容ではなくなります。


4.ヒアリングの際に気をつけること

工事保険の満期キャッチをした後に、ヒアリングで注意することは次のとおりです。

  • 事業内容

  • 気をつけている事故やリスク

  • 元請け業者からの要求

  • 事故が起きた場合の損害額


個人的には事業規模(売上など)が大きくない場合は工事保険を契約する必要性は少ないように感じていますが、元請けが契約するよう要求している場合もあるので注意してヒアリングするようにします。


建設業には免責事項も多いため、事例をよく踏まえながら適切な契約になるように丁寧に対応しましょう。

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