最近事業継続について話をするなかで、たびたび保険についての話題になります。元保険営業だったため、保険商品についての一般的な説明であれば保険業法に触れない程度でお話ししています。
そこで今回は「管理下財物」についてお話しします。管理下財物は保険を考える上で、かなり重要なテーマです。保険金が出る出ないに直結するような重要な契約ですので、この際に抑えておくといいでしょう。
目次
管理下財物とは
よくある事故例
免責となる事故例
管理下財物特約をつけた方がいい事業
保険でよく使う用語
・被保険者
一般的には保険の契約者。契約者と保険の対象者が異なる場合も多いため、保険契約で対象とされる者を被保険者といいます。具体的には、契約者は法人、被保険者は役員や従業員のようになります。契約者よりも被保険者の方が対象とする者が多いため、保険の説明では「被保険者」を使用します。
・損害賠償責任
保険会社は被保険者に損害賠償責任が発生したときに限り、保険金を支払います。被保険者に損害賠償責任が発生していない場合には保険金が支払われません。想定しているリスクが損害賠償責任が発生する事故なのかどうかは保険契約を結ぶ際に最も注意するポイントです。
・保険事故
保険金を支払うことになった案件のことを保険事故と言います。単に事故とも言います。交通事故よりも広い意味で使用する言葉です。
・免責事項
あらかじめ保険会社が責任を負わないと明記している事項のことです。保険には支払わない事例が数多く設定されており、保険を複雑にしている最も大きな原因が「免責事項」です。
1.管理下財物とは
管理下財物とは被保険者の管理下にある他人の財物のことです。保険業界では、一般的に管理下財物は「管理下財物に起こった事故の損害賠償責任保険」のことを指します。
管理下財物に起こった事故の損害賠償というのは、被保険者の管理下にある物が、被保険者の何らかの行為によって損害を受けたことに対して、その損害を賠償することです。保険契約では、「管理下財(物)つけた?」などと確認することが多いです。
2.よくある事故例
具体的にどういうことかを説明します。
例)塗装業者がマンションの壁面を塗装しているときに、強風が吹き、塗料がマンションの駐車場に停めてあるマンション住民の自家用車に付着してしまった。
このとき、作業現場であるマンションの駐車場に停めてある車は、塗装業者の管理している現場にある車両として考えられます。当然のことながら、この塗装業者には当該車両を修理する責任が発生しています。管理下財物の損害賠償責任を補償する保険を付けていないと、保険会社は免責として保険金を支払ってくれません。
3.免責について
対物賠償責任という用語を聞いたことがある方も多いと思います。自動車保険では「対人・対物賠償責任」などとして、人や物に損害を与えた場合の賠償責任を補償する保険として説明されています。対物賠償は一般的に他人の物に損害を与えた場合に使う保険ですが、この対物賠償の免責としてよく説明されるのが「管理下財物」です。
先ほどの例では、他人の車に塗料を付けてしまったので、対物賠償で補償されるのではと思われた方もいらっしゃるかもしれませんが、対物賠償では補償されません。これが免責事項です。
他人の持ち物で他人が管理している場合と異なり、管理下財物は他人の持ち物を被保険者が管理しています。この点において、管理下財物に対する保険は自分の持ち物に対する保険(物保険≒火災保険)と同じように考えることができます。そのため、管理下財物に関する保険は、賠償責任保険と考え方が大きく異なる保険として、賠償責任保険普通保険約款では免責となっています。
しかし、これでは多くのリスクに対応できないため、ビジネス保険を契約する際は管理下財物特約を付帯することになっています。
4.管理下財物特約をつけた方がいい業種
管理下財物をつけた方がいい業種は全ての事業者です。しかしこれでは回答になっていないので、どのような場合に管理下財物をつけた方がいいかをまとめます。
他社や他人の家、屋外など、自社以外の場所で作業する場合
他人の持ち物を一時的に預かる場合
元請け事業者などから材料を支給される場合
これらに該当する場合は管理下財物特約をつけた方がいいです。そしてほとんどの業種が当てはまると思います。
最後に
保険の契約内容は免責などのせいで非常に複雑になっています。私も保険営業時代、数々の保険証券を見てきましたが、事業にぴったり合った保険プランで契約している企業は数えるほどでした。ほとんどの企業は「保険のかけ過ぎ」と「必要な補償がない」状態が同時に起こっていました。
このように企業のリスクにぴったり合った保険になっていない理由は、保険営業担当が企業の業務内容に詳しくないからです。それに加えて、企業の担当者が保険料ばかりを気にしてしまうからです。
改めて保険について見直して、企業のリスクに対応できる体制を整えませんか?
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