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執筆者の写真福田結愛

SWOT分析と事業継続計画(BCP)

更新日:9月14日

今回は、NPO法人事業継続推進機構の事業継続主任管理士である中小企業診断士が、中小企業におけるSWOT分析と事業継続計画(BCP)の関係性についてまとめました。


SWOT分析×事業継続計画

この記事の内容は以下の通りです。

 

【目次】

  1. SWOT分析とは何かのおさらい

  2. SWOT分析では災害はT(脅威)に分類される

  3. 自然災害だけじゃなく、様々なT(脅威)への対策が必要

  4. しかし中小企業の現実は、脅威に対応するためのリソースが全く足りていない

  5. 効果的な事業継続計画を考えるには内部環境の弱み(=Weakness)を把握しなければならない

  6. 弱みを克服するための事業継続計画を作る


 

BCPの策定を検討している経営者のみなさまや、中小企業を支援している金融機関や商工会などの職員の方々にも読んでいただければと思います。


SWOT分析とは何かのおさらい


SWOT分析については別のブログでまとめているので、もし「SWOT分析ってなんだったかな?」という方がいらっしゃったら、一度読んでみてください。

(SWOT分析の考え方:https://www.dlcokayama.com/post/swotbunseki


簡単にまとめると、SWOT分析の「SWOT」とは次の英語の頭文字をとったものです。


  • Strength (強み)

  • Weakness (弱み)

  • Opportunity (機会)

  • Threat (脅威)


この4つの観点から企業を分析するのがSWOT分析です。さらにこの4つは企業の内部環境と外部環境の2つに分類することがあります。


内部環境:S(強み)、W(弱み)

外部環境:O(機会)、T(脅威)


SWOT分析では、災害リスクはT(脅威)に分類される


脅威とは、自社に悪い影響を与えるもののうち、自社でコントロールできないようなもののことを言います。例えば災害リスクはSWOT分析でいうところの「T(脅威)」に分類されます。具体的には、地震や洪水などの自然災害や、新型コロナなどの感染症が脅威になります。


自然災害だけじゃない。様々なT(脅威)への対策が必要


災害などに備えるということ、いわゆる防災の取り組みは、この脅威に対する対策になります。そのため、災害対策に関連する「事業継続計画(BCP)」は、脅威への対応を目的として作成されることが多いです。


中小機構が取り組みを勧める「事業継続力強化計画(ジギョケイ)」も、計画を作成する場合には、想定される災害を一つ選択し、その災害への対策を検討する内容となっています。


事業継続力強化計画

しかし、ほとんどの中小企業では災害への対策しか念頭に置かれておらず、サイバー攻撃や取引先の倒産、地政学リスクなどは検討されていません。先述した「事業継続力強化計画(ジギョケイ)」においても、災害対策が計画の中心となっています。


経営していく上で、どんなリスクがあるのか、自社はどんな社会環境に身を置いているのかなどを洗い出しておくことは非常に重要です。その上で、SWOT分析を行い、特に脅威について様々な視点から検討項目を挙げていく必要があります。


しかし中小企業の現実は、脅威に対応するためのリソースが全く足りていない


様々な脅威への対策を取る必要があると説明しましたが、実際に中小企業で出来る対策は非常に限られています。SWOT分析を行い脅威を洗い出したところで、実際に全ての脅威に対して事業継続計画を作成して、なんらかの有効策を準備できるかというと、そうではありません。


想定されるリスクに対応しようとすると、高額な設備投資が必要となったり、リスクに対応するための人員配置が必要となったりします。しかし、中小企業には設備投資をする資金や万が一のための人材確保ができるほどの雇用を確保することができません。


中小企業のうち約7割は赤字企業と言われ、また慢性的な人手不足とも言われています。そのような状況にある中小企業が直接売上に繋がらない、事業継続計画の取り組みのためだけにカネやヒトを準備できるかというと困難です。


効果的な事業継続計画を考えるには内部環境の弱み(=Weakness)を把握しなければならない


先ほど説明した通り、中小企業において、様々な脅威に対応することは非常に難しいです。ではどのようにして企業を取り巻くリスクから事業を守っていくのがよいのでしょうか。


当社では、まず自社の弱みを把握することを提案しています。例えば、ある機械が止まった場合に主力製品が全く作れなくなるのであれば、その機械への依存度が高いことが弱みになります。別の例を挙げると、ある運送業者との契約が見直しとなった場合、運送料金の値上げがサービスの停止につながるのであれば、その運送業者との交渉力の低さやサービス自体の価格競争力の無さは弱みになります。


特定の機械への依存度を減らすには、外注先を確保することや別の製品のシェアを高めるという選択肢もあります。また運送業者に対しては、これまでの発送頻度や発送方法を見直すことや、製造工程の一部を外注してライン全体のコスト低下を検討することも選択肢となります。


このように、自社が抱えている弱みを把握し、普段の業務を改善するような形で企業を取り巻くリスクに対応していくことが、中小企業の事業継続計画には適しています。


弱みを克服するための事業継続計画を作る


中小企業で事業継続計画の作成を支援する際に、災害への備えの前にもっとやることはあるんじゃないか、と感じることは多々あります。もちろん災害への対策を軽視するわけではないのですが、目先の経営についても十分な計画を立てていくことが大切です。


経営者のみなさまにとっても、万が一起こるかもしれない災害に対してではなく、すでに企業の弱みとして顕在化している問題に、少しずつ対策していくことの方が現実的で、計画としても取り組みやすいのではないでしょうか。


当社では、まずは弱みを認識し、その弱みを克服する形で事業継続計画を作成していくことをお勧めします。企業の弱みに対して様々な対策をとっていくことで、重大な問題が起こった際にも、事業を復元していく力(レジリエンス)を高く保てるのではないでしょうか。


余談:事業継続計画(BCP)策定のハードルの高さ


三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株)の「中小企業の災害対応に関する調査」(2018)によると、BCPを「策定していない」という企業は83.1%でした。


BCPの策定状況

BCPを策定していない理由としては、「人手不足」が最も多く29.1%、「策定の重要性や効果が不明」が21.1%でした。


BCPを策定していない理由

策定していない理由として最も多い「人手不足」の内容を噛み砕くと、従業員の知識・ノウハウの不足や担当者の不在などが考えられます。実際に私が支援した事業者様の中にも、経営者や従業員にBCPのノウハウがない、何からすればいいのかわからないという悩みがありました。


しかし、災害などの自社を取り巻くリスクを考えると、実際に災害が発生したときにどうすればいいのか、何から考えていけばいいのかなど、従業員レベルでは想像ができないことが多くあります。そもそも、従業員主導でBCPを策定していくのは無理難題です。そのため

BCPを策定する際には、まずは経営者が中心となって旗を振って取り組んでいく必要があります。


中小企業の場合は、事業継続計画について相談する相手がいないこともありますので、その際にはぜひ当社に声をかけていただければと思います。


事業継続計画について、もっと知りたい方はこちら




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