先日、中小企業白書が公開されました。中小企業をサポートする立場としては情報のアップデートとともに、広い視点(マクロ)ではどのような動きが起こっているのかを知る機会として、中小企業白書の公開は非常に重要視しています。
経営者の皆様が中小企業白書を全部読む必要はないと思いますが、概要程度は読んでみてもいいのではないでしょうか。例えば、自社の環境では受注がうまく取れず、売上がなかなか回復しないと感じていても、全国的にはコロナ以前の水準を超えているような場合もあります。自社の環境と、全国的な動向のギャップを掴むことで、経営の方針も見直すことができると思います。
さて、今回は中小企業白書についてブログを書いていますが、今年度公開された中小企業白書の1ページ目は能登半島地震とBCPの内容から始まりました。能登半島地震を受けて、中小企業庁が事業継続を重要視していることがよく分かる中小企業白書となっています。
そこで、この1ページ目の内容について、内容を見ていくとともに、事業継続を経営にどのように活かしていくべきかをお話しします。
中小企業白書の概要版と全文の違い
令和6年度中小企業白書概要版より抜粋
概要版では、『テーマ①令和6年能登半島地震と中小企業のBCP策定の状況』として
災害への備えとして、BCPの策定を行うことが重要。BCPを策定する企業は増加傾向にある
とまとめられています。
一方で、中小企業白書全文においては、BCPや事業継続の記載はありません。これがどういう意味かというと、中小企業庁では概要版を読む方にはBCP(事業継続)の重要性を理解してほしいと、強引にねじ込んだのではないかと思われます。
図4ではBCPの策定状況とその効果を記載していることから、BCP策定のメリットを紹介し策定状況をより改善していきたいという、中小企業庁の考えがあるのでしょう。
事業継続の意味とBCPの必要性
図4で効果として挙げられている効果は、事業継続の本来的な目的とは異なります。本来であれば、「BCPを策定することで不測の事態に備える体制が整った」などの効果が出るべきで、業務の定型化やマニュアル化、業務改善などは副次的な効果に過ぎません。
この副次的な効果をBCP策定のメリットとして打ち出すのは、本来的な事業継続の取り組みを阻害するのではないかとも思えてしまいます。
事業継続推進機構では、中小企業においてBCPを策定することは必須ではないと説明されています。私も実際に中小企業の支援現場に立ち会うと、計画書までに落とし込むほどの余力や、BCPを更新する労力が中小企業にあるとは思えません。
計画書までに落とし込む必要はなく、不測の事態に陥った際に、どのような行動指針を持つべきなのかを全社で共有していることの方が重要です。また、日頃から事業継続の意識を持って業務に取り組んでいくことで、変化に強い企業を作っていくことも重要です。
このような観点からすると、BCPが必要なのではなく、それぞれの企業に適した事業継続の取り組みが必要だと言えます。
事業継続にどのように取り組んでいくのか
BCPは必須ではないとはいうのものの、当社のように日頃から企業に計画書を書くことを勧めている立場からすると、計画書が必要ではないとはなかなか言いにくいところもあります。
実際に「事業継続力強化計画」などの計画書に取り組むことで、経営者や担当者が事業継続について考えを深める機会になることは間違いありません。
今年度から中小機構(中小企業基盤整備機構)の事業として、中小企業診断士が事業継続力強化計画の取り組みを支援する事業が実施されます。まだ十分な予算はついていないようですが、事業継続の取り組みを進める上では、非常によい事業だと思います。
計画を立てただけでは終わらないよう、日々事業継続を念頭に置き、経営に活かしていく。経営者も私たち支援者側も、そのような姿勢が必要になっています。
リスクに備えたいと考えていても「まず何から取り組めばいいのかわからない」という経営者の方は多いと思いますので、気軽に当社までご相談ください。
事業継続についての詳細はこちらをご覧ください。
コメント