飲食店の経営改善計画で、営業利益率を何%に設定するべきなのか

虎大郎 福田

飲食店の営業利益率は、店舗単位でうまくいっていても10%前後です。店舗の目標営業利益率を一般的な基準より高く置いた計画は、それだけで現実的でないと判断することができます。

ある支援先で、別のコンサルタントが作った経営改善計画を見る機会がありました。各店舗の目標営業利益率が25%を超えていました。この記事では、その数字がなぜ成り立たないのかを、公的な資料の数字で説明します。

公表されている調査から、飲食店の営業利益率を確認する

日本政策金融公庫が、小規模な飲食店の決算データを業態別に集計しています。売上高営業利益率を並べるとこうなります。

業態 全体の平均 黒字かつ自己資本プラスの企業の平均
一般飲食店(全体) -2.2% 4.3%
日本料理店 -1.9% 5.8%
西洋料理店 -2.4% 4.6%
中華料理店(ラーメン・ぎょうざ含む) -1.0% 3.3%
朝鮮料理店 -3.3% 4.1%
すし店 -2.5% 9.9%
喫茶店 -2.2% 5.2%
酒場・ビヤホール -1.8% 4.4%
バー・キャバレー・ナイトクラブ -0.7% 4.8%

出典:日本政策金融公庫「小企業の経営指標調査」(2025年度調査、2026年8月公表)。従業者50人未満の法人企業が対象。

全体の平均は、どの業態もマイナスです。黒字で財務も健全な企業だけに絞っても、ほとんどが3〜6%台。一番高いすし店でも10%に届きません。

営業利益の目安

店舗の営業利益率は、10%前後が一つの目安です。後で触れる金融庁の資料も、中小の飲食店の理想形を営業利益10%としています。業態やフランチャイズかどうかで、6%なのか8%なのか11%なのかは変わります。この幅は業態の差です。

ただ、20%や25%は、飲食店ではまず出てこない数字です。業態を知っていれば最初に押さえている前提なので、計画を作るときに外してはいけません。

店舗の損益は、もう埋まっている

金融庁が金融機関の職員向けにまとめた『業種別支援の着眼点』は、中小の飲食店の理想的な損益の形を、原価と人件費を合わせて60%、その他経費30%、営業利益10%と示しています。

実際の数字も、ほぼこの枠の中にあります。公庫の調査で、一般飲食店の黒字かつ自己資本プラスの企業と並べるとこうなります。

金融庁が示す理想の形 公庫・一般飲食店(黒字企業の平均) 営業利益率25%の計画
原価+人件費 60% 63.7%(原価32.2%+人件費31.5%) 60%と置いた場合
その他経費 30% 29.0%(このほかに減価償却費) 15%
営業利益 10% 4.3% 25%

公庫の値は各社の比率の単純平均なので、縦に足しても100%にはぴったり揃いません。人件費には役員報酬も含みます。

原価と人件費を理想の60%まで絞れたとしても、営業利益で25%を出すには、その他経費を15%に抑えるしかありません。理想の形の半分です。原価と人件費が実態どおり64%前後なら、その他経費に使えるのは11%しかありません。

しかもこの原価と人件費は店舗の分で、本部の経費は入っていません。店舗の段階でここまで詰まっていて、企業全体の数字はさらにその外側で本部経費を引いた残りになります。

その他経費は、売上に連動する

その他経費には、売上と関係なく毎月出ていく費用と、売上と一緒に増える費用が混ざっています。客の回転が多い店ほどエアコンも照明も長く動き、仕込みが増えればガス代も増えます。ラップ、洗剤、スポンジも、出数に応じて減っていきます。水道光熱費や消耗品費は、実際には変動費です。

公庫の数字がそれを裏付けています。一般飲食店の諸経費の比率は、全体平均で30.7%、黒字企業の平均で29.0%。ほとんど差がありません。店の規模で分けても、従業者5〜9人で29.8%、10〜19人で28.5%、20〜49人で28.8%と、ほぼ横ばいです。諸経費が固定費の塊なら、売上の大きい店ほど比率は下がるはずです。下がらないということは、諸経費の多くが売上に連動して動いているということです。差がついているのは原価と人件費のほうで、全体平均67.9%に対し黒字企業は63.7%です。

従業者1〜4人の店だけは、諸経費の比率が34.5%と高めに出ます。ただ人件費の比率が低く、二つを足すと他の規模とほとんど変わりません。ごく小さい企業では、役員報酬を抑えて私的に近い支出を経費で払っていることも多く、この区分は経費の振り分けに左右されやすい数字です。

売上と本当に無関係な固定費は、減価償却費と家賃くらいしか残りません。その家賃も、次に見るとおり、売上と無関係ではありません。

だから、その他経費は率で見るとほとんど動きません。売上が伸びれば額も増え、3割前後に戻ってきます。その他経費を15%に置いた計画は、売上が増えても経費がほとんど増えない店を想定していることになります。

家賃は、売上の天井を決めている

固定費が軽い店は、その分だけ店が小さく、入れられる客の数にも上限があります。家賃が安くて売上が大きい店は、まずありません。

家賃20万円の店で計算してみます。公庫の調査では、一般飲食店の客席1坪当たりの売上は月18.5万円(全体平均)〜22.8万円(黒字企業の平均)です。公庫の店舗面積は厨房などを除いた客席部分なので、店全体のうち客席を7割と置きました。『業種別支援の着眼点』が示す厨房と客席の割合(レストランで4対6、単品の店で3対7)の間です。坪家賃は仮定です。

坪家賃(仮定) 店の広さ 客席 出せる月商 家賃比率
1.0万円 20坪 14坪 259〜320万円 6.3〜7.7%
1.5万円 13坪 9.3坪 173〜213万円 9.4〜11.6%
2.0万円 10坪 7坪 130〜160万円 12.5〜15.4%

家賃20万円なら、月商はだいたい200万円前後です。「家賃は売上の1割」という目安は、コストの上限であると同時に、その家賃で借りられる箱ならこのくらい売れる、という釣り合いの話でもあります。

この店で月商500万円を出すには、客席1坪当たり月36万〜71万円が必要です。黒字企業の平均の1.6〜3.1倍です。家賃20万円で月商400万円、500万円を出している店があるなら、それは掘り出し物の物件を引いたのであって、計画を作るときに基準にする数字ではありません。

『業種別支援の着眼点』も、前年比110%のような売上目標を客数と客単価に落とすと実行できない計画になっていることがよくある、と注意しています。固定費を軽く置いて売上だけ大きく置いた計画は、小さい箱で大きく売ると言っているのと同じです。

家賃には、もう一つ注意が必要です。家賃は売上が落ちても下がりませんが、売上を伸ばそうとすると上がります。駐車場を増やす、隣の区画を借りて席を足す、広い物件に移るなど、客を多く入れようとすると、売上より先に家賃が増えます。

つまり家賃は、売上が下がるときは固定費のように動き、売上を上げるときは変動費のように動きます。売上の大きい店ほど広い店や良い立地を借りているので、家賃の比率も規模ほどには下がりません。

だから、家賃を据え置いたまま売上だけを大きく伸ばす計画は成り立ちません。売上を伸ばす計画なら、家賃も一緒に増える前提で組む必要があります。

なぜ飲食業一般の基準を大きく超えた営業利益率を目標とした計画書が作られてしまうのか

例えば25%などの営業利益率を設定している計画は、たいてい本部経費の扱い方を間違えています。

企業全体で利益を出したいが、本部の経費が重い。そこで本部経費をまかなえるように、各店舗の利益目標を逆算して積み上げると、店舗には業態の水準とは関係のない利益率が割り付けられます。

店舗の利益率は業態でおおよそ決まっていて、努力で動かせる幅はそれほど大きくありません。25%という数字は、その動かせない店舗の側に、本部経費の帳尻を合わせさせた結果です。

本部経費は「いくら」ではなく「何%」で持つ

考える順番は逆です。店舗の利益率は業態の水準で置き、本部経費はそれとは別に、売上に対して何%までという枠で持ちます。

本部経費を「年間いくら」という固定の額で置いてしまうと、売上が落ちたときにそのまま利益を食います。店舗が稼ぐ額は売上と一緒に減るのに、本部の額だけは減らないからです。売上に対する比率で枠を決めておけば、売上が落ちたときに本部も縮める、という判断を先に置いておけます。

売上5億円の企業で比べてみます。店舗の営業利益率は10%とします。

本部経費 4,000万円 本部経費 2,000万円
売上 5億円 5億円
店舗の営業利益(10%) 5,000万円 5,000万円
本部経費(売上比) 4,000万円(8%) 2,000万円(4%)
企業全体の営業利益 1,000万円(2%) 3,000万円(6%)

本部経費が売上の8%あると、店舗が目安どおり稼いでも、企業にはほとんど残りません。売上が少し落ちれば、すぐ赤字です。4%に収まっていれば、企業全体で6%前後が残り、さきほどの公庫の数字と同じくらいの水準になります。

支援の現場で見ても、売上5億円の企業で本部経費が4,000万円あると経営はかなり苦しく、2,000万円を切るくらいでようやく回ります。できればそれより絞りたい水準です。

計画の数字を見るときは

見るところは三つです。

  • 原価と人件費、その他経費を引いて、店舗に何%残る計算になっているか
  • その他経費の比率が、店の広さや家賃と釣り合っているか。軽すぎるなら、その売上は箱に入りきらない
  • 本部経費が、売上の何%になっているか

この三つを確かめれば、その計画が業態の実態に合っているかどうかは、おおよそ判断できます。

出典


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