飲食店の適正な事業規模は業態で決まる。客席数と人員の目安
飲食店には、業態ごとに「この客席数と人員なら利益が出る」という規模があります。創業の計画を立てるときは、いくらで始められるかより先に、この規模を知る必要があります。
一律に「初期投資は1000万円くらいで」と決めてしまう創業支援をよく見ますが、ラーメン店とランチ主体のレストランとカフェでは、客単価も回転数もオペレーションも違います。飲食店をひとくくりにして同じ金額を当てはめることが、そもそもの間違いです。この記事では、なぜ飲食店に適正な規模があるのかと、業態別の目安を書きます。
飲食店は製造業とサービス業の両方の性質を持つ
飲食店は誤解されやすい業種です。接客業として見られがちですが、実際には製造業の面とサービス業の面を同時に持っています。来店客が増えても、作れる量が追いつかなければ売上は上がりません。ここを本当に理解している金融機関のご担当者様は多くありません。
製造業としての面は、次のようなところに出ます。
- 仕込みの量で、その日の売上の上限が決まる
- コンロ、オーブン、冷蔵庫など設備の数で、売上の上限が決まる
- 調理の速さと段取りの良さで、売上の上限が決まる
- 利益率が仕入れに左右される
サービス業としての面は、次のようなところです。
- 料理と接客の質で売上が左右される
- 作ったものをその場で食べてもらう。作り置きして在庫にできない
- お客様との関係づくりが大事になる
- 営業中は常にお客様の対応が必要になる
売上を伸ばすときは製造業の面が、経費を考えるときはサービス業の面が効いてきます。順に見ていきます。
売上を伸ばすには製造業の視点で設備と人を決める
飲食店を始めるときは、まず将来どのくらいの売上を見込むかを決めます。製造業の面から考えると、見込む売上に合わせて必要な設備と人が決まるからです。
例えば、月の売上300万円のラーメン店を想定したとします。コンロはいくつ必要でしょうか。厨房には何人必要で、どのくらいの広さが必要でしょうか。実際の仕込みの量と、ピーク時に何杯出せるかから逆算して決めていくことになります。
想定より来店客が増えて、あとからコンロや冷蔵庫を足すことになった飲食店は少なくありません。アルバイトが足りずに回転が落ちている店もあります。飲食店は、製造業と同じように、設備と人が売上に直接効く業種です。

人件費は売上に比例しない。シフトを増やす段階で跳ね上がる
経費の側では、サービス業の面が難しさになります。飲食店は作ったものをその場で提供するので、在庫を持てません。そのため、忙しい時間と暇な時間に合わせて人を増減させることができず、常にピーク時に対応できる人員を置いておくことになります。
製造業なら、手が空いた時間に別の作業を前倒しして仕事を平らにできます。飲食店でも仕込みの前倒しはできますが限界があり、営業中はお客様が来れば対応しなければなりません。だから人件費は、どうしても多めにかかります。
もう一つ大事なのは、人件費が売上に比例して増えるわけではないことです。売上が少し増えても、同じシフトで回せているうちは人件費は変わりません。売上がある線を超えると、シフトを一人増やさなければならなくなり、そこで人件費が段階的に跳ね上がります。そのあとしばらくは、増えた人件費を売上が追いかける形になります。

つまり、飲食店の利益は、売上が増えれば一定に増えていくものではありません。人件費の段に対して、利益の幅がいちばん大きくなる売上高がどこかにあります。収支の計画を立てるときは、その売上高を探すことが要点です。
業態別の目安
ここまでの話から、飲食店には「事業の適正な規模=利益が出るときの売上高」があらかじめあると考えてください。大きすぎる店は、店舗を持て余して固定費と人件費で利益が薄くなります。小さすぎる店は、売上の上限が低くて利益を確保できません。
業態別の目安を挙げます。
ラーメン店。 客席数が10席だと、店主と従業員2人で回すことになり、従業員が育たず、店主は休みなく働くことになります。長く続けるには最低でも3人体制が必要で、そのためには客席数が20〜25席は必要です。
ランチ主体のレストラン。 客席数は40〜60席、6人体制が目安です。20〜30席だと、休日などの混雑時に売上が頭打ちになり、売上が伸びず、従業員の雇用も安定しません。
カフェ。 国内で成功しているカフェを見る限り、店内飲食が主体なら客席数は50〜100席の間です。個人経営のカフェによくある20席では、構造的に利益が出にくくなります。この話は長くなるので、別の記事で書きます。
これらの数字は、支援の現場で見てきた店舗の実態から置いた目安です。業態の中でも、立地や客単価、テイクアウトの有無で変わります。
適正な規模より小さく始めると、黒字でも次に進めない

適正な規模を下回って始めると、売上が伸びず、人件費と固定費の割合が高いまま固定されます。仮に黒字になっても、事業を広げる資金も体力も残らず、次の店には進めません。店を潰すところまでいかなくても、そこで止まります。
適正な規模を知る近道は、成功している他社をよく観察することです。同じ業態で、お客様から選ばれ続けている店が、何席で、何人で、どのくらいの売上で回しているか。そこから自分の計画を見直すと、小さく始めるつもりだった計画が、設備も人も足りない計画だったと分かることがよくあります。
飲食店を始めるときは、無理に事業を小さくするのではなく、適正な規模で始めることです。小さく始めてあとから大きくするなら、なおさら1店舗目が利益の出る規模になっていなければ、次につながりません。
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