居抜き物件を勧めない理由は、いくつかあるんですが、結論から言うと、「居抜き物件はやめとけ」です。(繰り返しているだけ)
理由その1:つぶれた立地・箱だから
居抜き物件ということは、飲食店が撤退したテナントということ。なぜ撤退したのか?理由はいくつかあるんでしょうが、立地や箱自体が悪い可能性は非常に高い。立地がよければつぶれないまたは他の大手フランチャイズ店が入るでしょうし、箱自体がよければスケルトンにして飲食店じゃない他の業種が入れるようにテナントオーナーが現状復帰を要求します。
なぜ居抜き物件があるのか。それは現状復帰しても借り手がつかないと思っている大家とちょっとでも負債を減らしたい店子の思惑が一致したから。もしかしたらリース契約が残ってるから。
理由その2:つぶれた業態だから
われわれ経営コンサルタントはマーケティングを信じています。味や接客ももちろん重要ですが、それよりも市場のニーズを分析し、その結果に基づいてサービスを検討します。
飲食店が撤退したということは、その地域にそのサービスに対する需要がなかったということ。具体的にいうと、ラーメン屋が撤退したらその地域にラーメン屋の需要がなかったということです。それなのに、ラーメン屋の居抜きでラーメンを始めても、うまくいかないと思いませんか?私はうまくいかないと思います。
理由その3:居抜きは使いにくいから
飲食店は業態や提供メニューによって設備も厨房レイアウトも客席も大きく変わります。前の店と同じメニューを提供するなら居抜きでもいいですが、全然違うメニューを提供するのに厨房が同じでいいわけがないですし、客席も全然変わるのが普通です。他の業種で考えてみてほしいです。製造業の工場をそのままもらって、別の製品を作れますか?飲食店の解像度が低すぎる人が多い。
理由その4:居抜きなんてない
なんか居抜き物件があるような前提で話が進められているけど、実際居抜き物件なんてないから。幻想だから。ありもしないものをさもあるかのように言って、創業者を困らせるのはやめてほしい。居抜きなんてない。
最後に:創業者や飲食事業を新たに始めようとしている人へ
居抜き物件に関わらず、店舗を借りて飲食店を始めようとする人は、建物の構造や施工に少し詳しくなることをお勧めします。たまに飲食店の内装を工事している現場を見たりすると、「こういうふうに壁を作ってるんだ」とか「天井ってこんなふうになってるんだ」とかわかることがあります。飲食店の難しいところは、立地と箱が自分の理想にぴったり合うことがないところです。立地はいいけど狭い、立地は悪いけど外観がすごくいい、立地はまあまあで駐車場が広いけど間取りが使いにくそう、など100点の物件はありません。
いい物件だと思ったけど業者に依頼したら構造上の問題で内装に制限ができてしまうこともあります。実は飲食に向かない物件で雨の日は営業ができないような場合もあります。建物を変えることはできないので、難しい物件を選択肢から外せるような能力を身につけることが、飲食店の開業を成功させる第一歩です。
もし居抜き物件を検討している場合は、絶対に前の店舗の業態やターゲットと被らないようなビジネスモデルにしてください。前の店舗がケーキ屋だったら蕎麦屋にする、居酒屋だったらパン屋にする、ラーメン屋だったら惣菜屋にするとかです。結局居抜きである意味(初期費用)があまりなくなると思います。
大切なのは、立地>箱>メニュー>味です。コンセプトから決め始めないでください。立地と箱に合わせてメニューを決めるようにしてください。そうすれば大きな失敗はないはずです。
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